食品成分有効性評価及び健康影響評価プロジェクト解説集
2006/01/12

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ガルシニアについて

荻野 聡美 , 齋藤 衛郎 , 佐伯 明子(国立健康・栄養研究所 食品機能研究部)


ガルシニアについて

1.肥満について
 肥満は、体脂肪の過剰な蓄積により体重が増加し、体型の乱れを生じます。このことから、肥満抑制効果を標榜する、いわゆるダイエット食品は、若い女性だけではなく、幅広い年齢層の女性の強い関心を集めています。
 肥満は、体型の変化ばかりではありません。リンゴ型肥満(内臓脂肪型肥満)は、腹部に脂肪が多くなる肥満で男性に多いタイプです。リンゴ型肥満は、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、冠動脈疾患、高血圧などの生活習慣病になりやすく、これら疾病の原因となる恐れがあります[1,2,3]。従って、肥満の予防は生活習慣病予防の点からも大変重要になり、男性からもダイエット食品に関心が集まる理由の一つになります。もし、抗肥満作用を持つ食品や食品素材が有効であるなら、それは生活習慣病の予防にも役立ちます。
 ちなみに、肥満の度合いを表す体格指数をBMI といい、日本人では25以上が肥満とされています。BMIは次の式で計算されます。


日本肥満学会による肥満判定基準

やせている普通肥満1度肥満2度肥満3度肥満4度
BMI18.5未満18.5以上25未満25以上30未満30以上35未満35以上40未満40以上


2.ダイエット食品
 近年、市場では多種多様なダイエット食品や食品素材が登場しています。これらダイエット食品は、機能性の面から以下の4つのカテゴリーに大きく分類することが出来ます。
1)食事から摂取する糖質(穀類、いも、砂糖等の糖類)や脂肪の消化・吸収を抑える
2)体内での脂肪の合成、蓄積を防ぐ
3)体内に蓄積された脂肪の酸化・分解を促進する
4)セロトニン等のホルモン作用を変化させて食欲を抑制する
ここで紹介するガルシニアは、効果が認められる場合には、主に2)、一部3)と4)の作用が考えられています。

3.ガルシニア
 ガルシニアは、正式にはガルシニアカンボジア(Garcinia cambogia)といい、インドや東南アジアに生育するオトギリソウ科の植物です。インドでは「ゴラカ(Goraka)」、「タマリンドマラバー(Tamarind Ma1abar)」などとも呼ばれています。常緑の中・高木で5〜9月頃にオレンジ大の大きさで、黄色からやや赤みがかった実をつけます(図1)。果実は皮が薄く、縦に深い溝があり、マンゴスチンの仲間になります。果実や果皮は柑橘類に似た強い酸味があり、熟果は果物として生食されます。果皮や実は乾燥させて貯蔵し、カレーの酸味付けや魚の塩蔵保存などにも用いられ、長年にわたりスパイスとして利用されています。
 ガルシニアの乾燥果皮中には多量の(-)-ヒドロキシクエン酸(HCA)が含まれています。ガルシニアはこのHCAを有効成分としており、肥満抑制を標榜する食品素材として多くのダイエット食品やサプリメントに利用されています。


4.HCAとは
 1965年、インドのLewisら[4]により、ガルシニアカンボジアの乾燥果皮から酸味成分であるHCAが取り出されました。HCAは、レモンなどの柑橘類に含まれるクエン酸と同様に、爽やかな酸味があり、その構造もクエン酸と非常によく似ています(図2)。


5.食事から脂肪の蓄積まで(図3)
 食事から摂取された糖質(炭水化物)は、主にグルコース(ブドウ糖)として吸収された後に分解され、細胞の中にあるミトコンドリアのクエン酸サイクル(TCAサイクル)によりエネルギーに変換されます。生成したエネルギーは体が必用とするエネルギーとして利用され消費されます。しかし、運動量が少ないなど、エネルギーの消費量が少ない場合には、グルコースはクエン酸に変換された後、ミトコンドリアを出て脂肪を合成する場である細胞質へ移行し、アセチルCoAを経由して脂肪酸そして脂肪、あるいは、コレステロールに変換され、体内に蓄積されます。


6.ガルシニア(HCA)の作用
 ガルシニア(HCA)を摂取したときの体内での作用を図4に示します。細胞質中のクエン酸からアセチルCoAが生成される時、反応を触媒する酵素、ATPクエン酸リアーゼという酵素が働きます。ガルシニア(HCA)を摂取すると、HCAはクエン酸に比べてATPクエン酸リアーゼと非常に結びつき易いので[5]、細胞内に、ある程度の濃度のHCAが存在するとATPクエン酸リアーゼの働きが阻害され、クエン酸からの脂肪合成が抑えられます。
 ATPクエン酸リアーゼの働きが阻害されると、クエン酸量が増加することになり、結果的にグルコースからのグリコーゲン生成量が高まり、血液中のグルコースの濃度が安定して、空腹感が抑制されることになります。さらに、アセチルCoA生成が減少するとマロニルCoAの濃度も低下します。その結果、マロニルCoAの減少により活性化する酵素であるカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)が活性化するとともに脂肪酸の燃焼(分解)が促進され、体脂肪蓄積が抑制されることになります[6,7]。
 従って、糖質の多い食事(高炭水化物食)では、余った糖分が脂肪酸合成に向けられるのを抑制し、体脂肪の蓄積が抑制されることになります。さらに糖質からの分解により生成するクエン酸量の増加に伴い、結果的に肝臓でグルコースからのグリコーゲン合成の促進[6,8,9]、クエン酸からアセチルCoA生成の低下によるコレステロール生合成低下[8,10]、マロニルCoA濃度の低下による脂肪酸と脂肪合成の低下により血漿中性脂肪濃度の低下[11,12]、エネルギー消費の増加[13,14]などがHCAの効果として報告されています。


7.ガルシニア(HCA)の効果確認試験
 6.で述べたような効果があるか、否か、効果を確認するため、色々な条件で動物、ヒトによる試験が行われています。

〈動物試験〉
 いわゆる通常のラット(遺伝性の疾患素因を持たないラット)に、ガルシニアを混ぜた餌を自由に摂取させHCAの影響を検討した実験があります。ガルシニアを摂取したグループは、摂取しなかったグループと比べて摂餌量が減少し、体重増加抑制、体脂肪蓄積抑制効果が観察されました[11,13,15]。この実験では、ガルシニアを摂取したグループは、摂取した餌の量(摂取エネルギー)が少ないために体重増加と体脂肪蓄積が抑制された可能性があります。そこで、ガルシニアを食べるグループと食べないグループで摂取するエネルギーを同じにした実験を行いました。この実験はエネルギー摂取量を一定にしたペアフィーディング試験と言います。結果は同様に体重増加と体脂肪蓄積抑制が観察され、HCAによる体重及び体脂肪蓄積抑制効果が確認されました[16]。このエネルギーの摂取量を一定にしたペアフィーディング試験により、体脂肪の蓄積抑制は、摂餌量の減少に伴うエネルギーの摂取低下によるばかりではなく、HCAによる糖質からの脂肪合成抑制によるものであることが明らかになりました。

 一方、遺伝的に肥満の素因をもつラット(肥満型)とそのやせ型を用いてガルシニアを混ぜた餌を自由に摂取させ、HCA投与による体組成および脂肪組織に与える影響を比較しました。肥満型、やせ型いずれもHCAにより摂食量の低下、体重増加の抑制が観察されました。このとき、やせ型では、HCA投与により脂肪細胞数と脂肪細胞サイズの低下が観察されましたが、肥満型では、脂肪細胞数は低下するもののサイズに差は見られませんでした[17]。また、エネルギー摂取量を一定にしたペアフィーディング試験でも、やせラットではHCA投与により脂肪細胞数とサイズが低下し、体脂肪蓄積抑制効果が見られましたが、肥満ラットでは脂肪細胞数はやや低下するものの、サイズは大きく、HCAによる体脂肪蓄積抑制効果は得られませんでした[17]。これは、HCAは、成熟した脂肪細胞になる前の細胞の増殖を抑制することにより脂肪細胞数の増加を抑制しているのかもしれません。肥満ラットで体脂肪蓄積抑制効果が得られなかったことに対する明確な説明はなされていませんが、恐らく、循環している血液から脂肪を取り込む機能が活発であること[18,19,20]、脂肪組織での脂肪を合成する機能が活発であること[21]等の肥満になりやすい体質がその理由にあげられるのではないでしょうか。

―なぜ摂食量(食欲)が低下したのか?―
 食欲は、脳の視床下部にある、空腹中枢と満腹中枢によってコントロールされています。空腹中枢が刺激されると食欲を感じ、満腹中枢が刺激されると食欲が抑制されます。ラットやマウスの満腹中枢を破壊し、HCAを含むエサを与えたところ、食欲抑制がかかったので、HCAによる食欲抑制は満腹中枢以外を介したものであることがわかりました[22]。
 また、食欲を抑制する物質として、レプチンという脂肪細胞から分泌されるホルモンがあります。このレプチンが視床下部にあるレプチン受容体に作用することにより、「満腹である」という信号が送られ、摂食量が低下し、エネルギーの消費量が増加します。しかし、ここで用いられた肥満ラットは、レプチン受容体に異常があり、レプチンが結合できず、食欲抑制効果も示しません。つまり、肥満ラットを用いているので、摂食量低下はレプチンを介したものではないと考えられます。
 以上から、HCAによる食欲抑制のメカニズムはこれら以外の作用によるものと考えられます。近年、HCAによる食欲抑制のメカニズムとしては、神経細胞から消化管ホルモンや神経伝達物質として働くセロトニンの放出の促進と再取り込みの抑制が提案されています[23,24]。この作用は、医薬品成分であるフェンフルラミンと類似の作用になります。肝障害等の健康被害が報告されている、中国製のダイエット食品に含まれるN-ニトロソ-フェンフルラミンは、フェンフルラミンの誘導体です。

〈ヒト試験〉  動物試験の結果を基に、ヒトでもガルシニア(HCA)の効果を確認する試験が様々な条件で行われています。効果があるという結果と、効果が得られないという結果の両方があり、現在のところ統一的な見解は得られていません。
 食欲抑制の有無、体重、BMI、体脂肪率等への影響に焦点をあて、ヒト試験の結果を紹介します。


―食事制限しない場合―
 1988年にアメリカのセルジオ氏は、自身が実験対象者となり、HCAを20〜30%含むタマリンドマラバー(ガルシニアカンボジア)を1日3回、毎食事前に1gずつ摂取(推定HCA摂取量600〜900mg/日)したところ、食欲が抑えられ、1日約1ポンド(約450g)の体重減少があったと報告しています[25]。
 また、2000年に日本では、肥満傾向がある健康な男女(平均年齢:36.8歳、平均BMI:27.9)40名を被験者として、ガルシニア錠摂取群(HCA摂取量1,000mg/日)とプラセボ*錠(ガルシニアを含まない偽薬)摂取群にわけ、8週間摂取した時の脂肪蓄積に及ぼす効果を検討しました[26]。腹部CTスキャンで臍部横断面を撮影して内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を測定したところ、プラセボ群と比較して内臓脂肪面積値の高いヒトでのみ、内臓脂肪面積値が低下しましたが、体重、BMI、体脂肪率では変化がありませんでした。
 これと同じような被験者の条件(平均年齢:37歳、平均BMI:27.5)でトマトジュースのみのプラセボ群と、300mgのHCAを混ぜたトマトジュース摂取群(HCA摂取量900mg/日)で2週間摂取した時のエネルギー摂取量と食欲への影響を検討しました[27]。昼食、夕食の1時間前と夕食の2時間後の3回摂取しました。24時間のエネルギー摂取量(特に間食のエネルギー摂取量)がHCA群で減少しましたが、食欲には変化がありませんでした。このことから、HCAの効果を効果的にするためには、HCAを摂取するタイミングが重要になってくることがわかります。

*プラセボ:「偽薬」の意味です。薬を開発するときに、開発中の薬を投与する患者群と、全く治療効果が無い「プラセボ」を投与する患者群(プラセボ群)に分けて、それ以外は全く同じ条件で試験を実施し、それによるデータを測定して、両者のデータを比較して治療効果を確かめるというものです。
 プラセボは、治験薬と外見(外の色・形・大きさ・肌合い・中の色)、重さ、味覚の点で全くそっくりに作られていて、中身を分析しない限り判別することはできません。

―食事を規定した場合―
 次に、食事を規定して、ガルシニア(HCA)を摂取した場合を紹介します。
 肥満又は肥満の兆候を示す健康な女性30名(年齢:33〜67歳、平均BMI:26.5)をHCA群とプラセボ群にわけました[28]。HCA群は、HCAを250mg含むゼリー飲料を食事の30分〜1時間前に1日3本、12週間摂取しました。食事内容は医師が確認し、1日の摂取エネルギーが1,800kcal以下になるように栄養指導を行いました。体重、腹部CTスキャンによる、脂肪面積は、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積ともにHCA群はプラセボ群と比較して減少しました。
 同様に健康な女性(年齢:18〜65歳、平均BMI:28.6)に対して、食事を1日1,200kcalと規定し、1日1,200mgのHCAを12週間摂取したところ、体重は減少しましたが、食欲抑制効果は見られなかったという報告もあります[29]。また、BMI27〜33の健康人(大半は女性)にHCA400mg、カフェイン50mg及びピコリン酸クロム40(gを含む市販カプセルを食事の30分〜1時間前に1日3回、低エネルギーの1,200kcal/dの高繊維食とともに6週間摂取させた試験[30]、BMIが約32の健康人(大半は女性で18〜65歳)にHCAを500mg含むカプセルを食事の30分前に1日3回、低エネルギーの1,200kcal/dの高繊維食とともに12週間摂取させた、ともに食事を高繊維食にした試験[31]がありますが、どちらもプラセボ群と比較して、体重及び体脂肪量いずれにも有意な変化は観察されませんでした。
 市販されているガルシニアを含むダイエット食品には、HCAがカルシウムと結合していて水に溶けないタイプのものや、水に溶けるように調製したタイプのものがあります。健康な男女にHCA250mgを食事の30分〜1時間前に1日3回、8週間摂取させ、カルシウム結合タイプの錠剤と水溶性タイプの錠剤やドリンク剤で効果を比較しました[32]。開始時と比べ、カルシウム結合タイプを摂取した人で平均0.4kg強、水溶性ガルシニアエキスの錠剤型あるいはドリンクを摂取した人ではいずれも1kg強の体重減少を観察しました。水溶性の方がカルシウム結合タイプよりも効果が高いようです。
 軽度肥満から肥満(BMI27.5-44.5)までの健康成人を対象として、1日1200kcalの低エネルギー・低脂肪食と運動を組み合わせてHCAを含有するダイエット食品を8週間摂取させ、その効果を検討したところ、HCA摂取群で食欲の抑制とともに、体脂肪の減少による体重の低下、総コレステロール及び血圧の低下が観察されています[33]。


―脂肪燃焼とエネルギー消費作用―
 HCAの効果の一つに、「6.ガルシニア(HCA)の作用」でも述べたように脂肪の燃焼促進作用が言われています。栄養素の代謝過程を測定する指標として呼吸商(RQ)というものがあります。呼吸商とは、呼吸によって体内に取り入れられた酸素量に対する吐き出された二酸化炭素量の割合を言い、RQ=出される二酸化炭素量/吸った酸素量 の式で表されます。炭水化物が燃えると、吸った酸素1に対して、出される二酸化炭素も1になり、炭水化物のRQは1です。脂肪が燃えると、吸った酸素1に対して、出される二酸化炭素は0.7になり、脂肪のRQは0.7です。従って、動物が運動した時、RQが0.7に近づくほど脂肪が燃えていることになります。
 Kovacsら[34]は、平均BMIが27.4の健康男性(平均年齢47歳)にHCA500mgあるいはHCA500mgと中鎖脂肪酸トリグリセリド3gを通常の食事とともに2週間摂取させ、食欲、脂肪の酸化(RQの測定)、エネルギー消費、体重減少に対する影響を検討しましたが、プラセボ群と比較して、いずれの測定項目にも有意な差は観察されませんでした。
 アメリカのKriketosら[35]は、平均BMIが29.1(22.4〜37.6)の健康男性(22〜38歳)にHCA1.5gを朝と夕に計3gを3日間、典型的な欧米の食事である脂肪エネルギー比30〜35%の食事とともに摂取させ、4日目にHCA1.6g摂取と運動を取り入れ、エネルギー消費とRQを測定しました。プラセボ群と比較して、運動の有無に係わらず、エネルギー消費、RQいずれにも変動はなく、典型的な欧米食の下で、しかも短期間では、HCA、運動いずれも、エネルギー消費には影響しないようでした。
 van Loonら[36]は、日頃、持久力訓練を行っている自転車競技選手(平均年齢が24歳、平均体重73kg、平均BMI22.1)に、HCAを平均4.4gずつ4回、運動を負荷する45分前と15分前、運動開始後30分と60分後に摂取させました。脂肪と炭水化物の酸化速度はプラセボ群と比較して差を観察しませんでした。ただし、疲労度を示す血液中の乳酸値は30分後のみHCA摂取群で低値を示しましたが、60分以降は差が見られませんでした。この試験は、1日だけではありますが、計18g弱もの多量のHCAを摂取させています。

―HCAの体内消長―
 HCAを摂取してから経時的に採血し血液中のHCA濃度の変化を測定したところ、およそ1〜2時間後に最大濃度となり、その後、徐々に減少しました[36,37]。この結果は、HCAが消化管から吸収され、血液を介して循環し、標的臓器に到達してその効果を発現することを示しています。3時間後に濃度のピークを迎えた例もあり、ヒトにより吸収や消失速度に違いがあるようです[37]。摂取前の濃度に戻るまでの変化を測定した報告は見あたりませんが、6時間程度はかかると思われます。

8.ガルシニア(HCA)の安全性
 ガルシニアについては、3.の項でも述べたように、東南アジアにおいて果物やスパイスなどとして長年にわたり利用されて来ており、食経験上安全性に問題は無いと考えられています。また、これまでに報告されている、動物試験、ヒト試験いずれにおいても有害事象が観察されたとする報告は見あたりません。しかし、当初から安全性を目的として動物試験によりそれを証明したデータは少なく、特に長期摂取による影響は明らかになっていません。
 ラットを用いた試験では、ガルシニア(HCA)の安全性は高いと考えられています。さらに、健常人でガルシニア多量摂取の安全性を検討する目的で、HCAとして計4gを毎食前に3回に分けて1日間摂取させた場合、及び、HCAとして計3gを毎食前に3回に分けて10日間連続摂取させた場合、いずれも、有害事象は観察されなかったと報告されています[38]。
 しかし、我々がHCAを含む飼料を肥満ラットに与えたペアフィーディング試験を行ったところ、多量投与(154mmol HCA/kg diet)で副精巣周囲脂肪の蓄積抑制には効果がみられたものの、HCAとして102mmol/kg diet以上(778mg HCA/kg BW/日以上)を含む飼料を摂取した場合に精巣毒性(精細胞の萎縮と変性、精子形成不全)が観察されました[39]。また、その毒性は用量に依存してより顕著に現れ、摂取量が多くなればなる程毒性が強く現れました。この研究で用いた水溶性のガルシニアパウダーSRは、市販の「いわゆる健康食品」の素材として使用されており、重金属や環境汚染物質等の有害物質による影響は除外できると考えられます。
 同様なラットに対する精巣毒性は、別のグループによるHCAのカルシウム塩(ガルシニアパウダーCRR)を用いた試験でも観察されました。詳細は厚生労働省から公表されており(http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0307-1.html)、精巣毒性の本体は、HCAそれ自体の可能性の高いことが示唆されています。
 市販されているガルシニアエキスを含む「いわゆる健康食品」の一人1日当りのHCAの有効摂取目安量(750〜1500mg HCA)は[26, 40]、体重50kgの人では15〜30 mg HCA/kg BW/日に相当します。この量は我々が行った試験のNOAEL(無毒性量:51mmol HCA/kg diet、389mg HCA/kg BW/日)の1/26〜1/13量となりますので[39]、摂取の指示量を守れば有害な影響は起こらないだろうと予想されます。
 しかし、ガルシニアを含有する「いわゆる健康食品」は、種々の形態(清涼飲料水に混合したもの、錠剤やカプセルなど)で販売されています。こうした食品はダイエット効果を強く期待して目安量を大幅に超えて摂取される可能性があり、高濃度に含有する錠剤やカプセルの形態では、簡単に大量摂取することができてしまいます。摂取対象者はダイエットを志向する不特定多数のヒトであり、感受性の高いヒト、低いヒト等様々なヒトがいます。また、我々が検討に用いた肥満ラットと同様な体脂肪蓄積性の高い脂質代謝の特性をもつ人では、ガルシニアエキスの体脂肪蓄積抑制効果はほとんど期待できないと考えられる[39]うえに、ヒトのATPクエン酸リアーゼ活性はラットより低く、グルコースからのアセチルCoA生成がラットの約1/40とされるため[41]、極端な高炭水化物、高HCA、低脂肪食という食事を別にすると、ヒトでHCA摂取による体脂肪蓄積抑制効果は一層得られにくいと思われます。
 こうした点を考慮すると、精巣毒性の可能性を否定出来ない現在、充分な安全性が判明するまでは摂取を控えることが賢明と考えられます。なおメスラットを用いても同様な過剰摂取による検討を行いましたが、メスでは雌性生殖器に対する有害な作用は観察されませんでした。


9.まとめ

 ガルシニアの体重減少、体脂肪蓄積抑制効果の可能性について、これまでの知見をまとめてみました。このようなサプリメントは、摂らなければならないものではありません。医薬品との相互作用についても検討されておらず、精巣毒性の可能性も否定できません。摂取を控えることが賢明と言えるでしょう。  バランスの取れた食事、適量の摂取、そして積極的に体を動かすことを心掛けて、健康的な生活をエンジョイしましょう。  


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