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HTLV-1に関する重要論文の要旨

2010年度

1)HTLV-1 bZIP因子は、in vivoにおいてT細胞リンパ腫と全身性の炎症を引き起こす
 佐藤賢文、安永純一朗、趙鉄軍、吉田美香、宮里パオラら

HTLV-1は、ATL及びHAM/TSP、皮膚炎や炎症性肺疾患を含めた炎症性疾患の原因ウイルスである。しかし、HTLV-1がこれらの疾患をどのようにして発症させるかはまだよく分かっていない。HTLV-1のTax遺伝子は、HTLV-1の病原性に深く関与していると考えられてきたが、ATL細胞でのTax遺伝子の発現はしばしば失われている。一方、HTLV-1はゲノムのアンチセンス側にbZIP因子(HBZ)をコードしており、ATLの全症例にその発現が見られる。本研究において、マウスCD4+ T細胞へのHBZ遺伝子導入は、HTLV-1感染者に観察される病態に酷似した、T細胞リンパ腫と全身性の炎症を引き起こした。患者のATL細胞は、CD25+CD4+ 制御性T細胞(Treg)に類似しており、その約60%がFoxp3を発現している。HBZ遺伝子導入マウスにおいて、CD4+Foxp3+ Treg細胞とエフェクター/メモリーCD4+ T細胞はin vivoで増殖していた。Treg細胞の増殖機構としては、HBZの発現がT細胞におけるFoxp3遺伝子の転写を直接誘導していた。HBZ遺伝子導入マウスで増殖したCD4+Foxp3+ Treg細胞は、増殖能が増強されている一方、機能的に障害されていた。HBZは、物理的にFoxp3やNFATと相互作用でき、それによってTreg細胞の抑制機能を障害していた。以上の結果から、CD4+ T細胞におけるHBZの発現は、HTLV-1によって引き起こされる新生物や炎症性疾患の重要なメカニズムであると言える。
PLoS Pathogens 2011;7(2):e1001274

2)無症候性HTLV-1キャリアにおけるHTLV-1プロウイルス量と病状進行:日本における全国規模コホート研究
 岩永正子、渡邉俊樹、宇都宮與ら

無症候性HTLV-1キャリアの明らかなATL発症危険因子は不明のままである。最近、HTLV-1プロウイルス量はATL発症の重要な 予測因子として評価されてきたが、少数の小規模なコホート研究しか行われていなかった。我々は、2002年から2008年までの 間に登録された無症候性HTLV-1キャリア1218人(男性426人、女性792人)を前向き的に評価した。登録時のプロウイルス量は、 女性より男性の方が(中央値,100末梢血単核球あたり2.10対1.39コピー;有意差検定P値< 0.001)、40歳以下より40〜49歳と 50〜59歳の方が(それぞれP値0.02と0.007)、またATLの家族歴が無しより有りの方が(中央値,100末梢血単核球あたり2.32対 1.33コピー;P値0.005)有意に高値だった。観察期間中、14人がATLを発症した。彼らのプロウイルス量のベースラインは、 高値を示していた(100末梢血単核球あたり4.17〜28.58コピー)。プロウイルス量のベースラインが約4コピーより低値だった キャリアでは、誰もATLを発症しなかった。多変量解析では、プロウイルス量高値、高齢者、ATLの家族歴だけでなく、他疾患を 治療中に受けた最初のHTLV-1検査が、ATLに進展する独立した危険因子であることが示された。
Blood. 2010;116(8):1211-1219

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