研究室紹介|吉村和久研究室

はじめに: HIVを最もHIVたらしめている特徴は、ウイルスを構成する多くのパーツが置き換え可能であるという点にあります。そのため、HIVはレセプターの違いにしろ、宿主抑制因子にしろ、免疫反応にしろ、細胞内外の数多くの障害をいとも容易く乗り越えていくことができるのです。このオールマイティーと思われる切り札に弱点はないのでしょうか？; ウイルスのこれら当意即妙・臨機応変の変化は、一見場当たり的に行われているように見えます。しかし、何らかの法則（傾向）が存在しているはずです。たとえば、ウイルスが必ず通過しないと先に進めない道を見つけられれば、そこをせき止めたり、わざと迂回路をつくらせて袋小路へと追い込んだりする方法が考えられるでしょう。あるいは、現在使用可能な抗HIV薬や、開発中の治療用単クローン抗体そして感染者体内に存在する自己の抗Env抗体などが、HIVをどのように追い込み、変異を促すのか、また、その結果ウイルスは何を切り捨てざるを得なくなるのかが判明すれば、治療薬の順番や種類を決定する新たな基準になるでしょう。; 我々の研究における焦点は、このような今まで分かっていたようで実は未知の部分多いHIVの逃避と馴化の領域なのです。これらのデータを積み重ねていく中で、HIVが何に対してどのように反応していくのかをあぶり出していければ、HIVの最強兵器である変幻自在のフレキシビリティーを逆手に取った治療方法が発見できるのではないかと考えています。; 我々の研究室では、感染症例から分離したprimary isolates（臨床分離ウイルス株）を用いてなるべくin vivoに近い状況でのin vitro 耐性誘導の系を確立し、薬剤や中和抗体からのウイルスの逃避のメカニズムの研究を行っています。海千山千の野生の悍馬のようなHIV達を見事乗りこなすことが出来れば、新しいHIV感染症の治療法発見もあながち夢物語ではないと思って日夜研究を行っています。

研究室のモットー: 新しいコンセプトやシステムの開発に積極的に取り組む; 安全なサンプル及び機器の取り扱いの習熟; 臨床と基礎のつながりを意識した研究を行う; 毎日わくわくしながら研究室に来る

研究室の特徴: 日本で最大規模のアッセイ可能な臨床分離HIV株の保持; 上記臨床分離株を用いたin vitro 耐性誘導システムの樹立、開発; 各種耐性Env組換えウイルスの作製（シュードおよび感染性クローン）; 新規抗HIV薬剤の迅速なスクリーニング及び耐性プロフィールの検証

研究プロジェクト: HIVの薬剤耐性変異に関する研究（in vitro）HIVの薬剤耐性変異に関する研究（in vitro）CCR5阻害剤の耐性誘導および耐性メカニズムの研究インテグレース阻害剤の耐性誘導および耐性メカニズムの研究複数薬剤の組合せによる耐性誘導および耐性プロフィールの研究; HIVの薬剤耐性変異に関する研究（in vivo）CCR5阻害剤投与患者からの分離ウイルスの研究多剤併用療法(cART)下のウイルスEnvの変異の研究; HIVの中和抗体逃避変異に関する研究（in vivo/vitro）中和単クローン抗体からの逃避メカニズムの研究; CD4類似化合物 (NBD analogue, etc.)の開発（共同研究：東京医科歯科大・玉村研）新規bi-functional CD4 mimic moleculeの開発CD4類似化合物の耐性誘導とgp120結合プロフィールの研究CD4類似化合物の構造機能相関の研究; HIVのEnv立体構造に関する研究CCR5阻害剤耐性変異がEnv立体構造に与える影響の研究中和抗体逃避変異がEnv立体構造に与える影響の研究高力価中和抗体誘導Env抗原の開発に関する研究; 新規抗HIV治療法に関する研究（in vivo）新旧治療薬の新たな効果的な組合せの研究CCR5阻害剤の耐性誘導および耐性メカニズムの研究