国立感染症研究所ホームページ

国立感染症研究所長より

ご挨拶 −国立感染症研究所の役割−

国立感染症研究所長
渡邉治雄

渡邊所長 SARSや新型インフルエンザ(A/H1N1)の事例でより明らかになったことですが、 ひとたびどこかの地域で発生した感染症(細菌やウィルスなどの微生物がヒトに感染することにより起こる病気) は瞬く間に世界全域に拡大していきます。 いまや感染症は「一国の問題ではなく、世界の問題」 として認識すべき課題となっています。 我々に感染症を引き起こす病原体(微生物)も生き物ですので、 子孫を残すために必要な遺伝物質(核酸)を変化させ進化を重ねています。 その変異が私たち人類に対して危害を及ぼすものであった場合には、 新規の病原体となってしまう可能性があります。 私たち国立感染症研究所(感染研:NIID; National Institute of Infectious Diseases) の大きな使命のひとつは、そのような人類に脅威となる病原体(それによって起こる病気) の出現(人類の危機)を迅速に検知し、 その拡大を阻止するための対策に結び付く科学的な提言を国内外の関係者や国民の皆さんに行うことにより、 国民一人ひとりの健康を守ることに貢献することにあります。 我々は、「国民および世界のための研究所、国民および世界に必要とされる研究所」であることを目指しています。

 新しい病気(あるいは病原体)を検知することは、日常的な監視を続け、 異常をいち早く見抜く能力を培うことによって成し遂げられます。 そのために日ごろから行っております感染研の主な仕事を以下に紹介します。

fig1
図:国立感染症研究所の機能と役割

感染研のミッション(PDF文書)

『感染症および病原体の動向調査』

fig2  60以上の疾患が「感染症法」という法律において適切な対応を行うべき対象となっています。その疾患を診断した臨床医は最寄りの保健所に報告する義務があります。また、各都道府県に設置されている地方衛生研究所は患者検体から病原体を分離し、解析等を行っています。国立感染症研究所はそれらの情報を受け取り、全国レベルの分析を行い、その結果を各都道府県に還元するとともに週報(IDWR)や月報(IASR)として研究所のホームページに掲載しております。さらに、国立感染症研究所は、自治体からの要請に基づき、また感染症法に基づいた積極的疫学調査として現場の疫学調査や分離された病原体の詳細な解析の支援を行います。このように日常的に感染症および病原体の動向調査を行うことが異常な感染症の発生の発見の要となるため、地方衛生研究所と国立感染症研究所との連携(ネットワーク)は重要なものとなります。

『国際的連携』

fig3  高病原性鳥インフルエンザH5N1やSARSなどはアジアを中心に発生し、世界に拡大しました。また、新型インフルエンザ(A/H1N1)はメキシコで発見され,その後全世界に広がりました。世界のどこかで発生している感染症の情報をいち早く把握し、その信憑性、重要性を判断する必要があります。そのために、国立感染症研究所は、正確な信頼できる情報を収集・分析する体制を構築しています;世界保健機関(WHO)などの国際機関や、感染症を担当する各国の国立研究機関(米国CDC、中国CDC、韓国CDC/NIH、EU-CDC, 英国PHA等)との連携を強化して、そのパイプを太くしてきています。また、アジアを中心としたネットワークをより重視し、国立感染症研究所-中国CDC-韓国CDC/NIHの3国の研究機関との定期的な研究交流を重ねてきております。さらに、WHO西太平洋地域委員会(WPRO)や東南アジア諸国連合(ASEANプラス3)のメンバーとして積極的にアジア地域での感染症対策に科学的な側面から貢献をしてきています。

『調査、研究』

 危機の時にその能力を発揮できるようにするためには日ごろからの準備が重要です。国立感染症研究所には情報収集・解析部門、疫学調査部門、実験室での病原体研究部門に所属する職員(研究職;医学博士や理学博士等の学位を持つ専門家が約320名)がおり、それぞれの専門分野での仕事をしております。情報収集部門の職員は、感染症に関するメディア情報および論文として発表された情報の信憑性を分析し、その結果をホームページ等に迅速に載せています。疫学調査部門は集団事例等が発生した場合に現地に飛び、自治体の専門家とともに調査を行い、対策への支援をしています。実験室での病原体研究部門の専門家は、各病原体がどのようにヒトに病気を起こすのかの詳細な機序の解明を行い、その成果を、迅速に病原体を検出するための新しい方法の開発や予防・治療方法の開発に応用させています。また、開発された技術等を地方衛生研究所やアジア等の海外の研究機関に伝達しています。その成果は国立感染症研究所のホームページの「感染研年報」でご覧いただけます。

『生物製剤の品質管理』

 国立感染症研究所の重要な役目としてワクチン等の生物学的製剤の国家検定(品質管理)があります。ワクチンによる予防接種は感染症を予防する手段として重要なものです。予防接種で免疫が付与されれば、感染したとしても発症しないか、あるいは重症にならないで済みます。最初に国で承認されたワクチンと同等の品質であることが国家検定により保証されたもののみが、市販され使用されています。

『終わりに』

 国立感染症研究所は、厚生労働省が管轄する我が国唯一の感染症に関する総合的な研究を行う国立機関として、国が行う行政対応を科学的側面から支援しています。そのために必要な研究能力をもつ科学者集団として、国民一人ひとりの健康を守るために活動しています。6月に厚生労働省でとりまとめられた新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議の案では、感染症危機管理体制の強化の一環として、国立感染症研究所については、さらに「より良い組織や人員体制を構築すべきである」と述べられています。その期待に沿うような成果を上げるようにしていきたいと思っております。  

新しいメッセージ

2012年 年頭挨拶(PDF文書)

感染研のミッション(PDF文書)