WHOの日本脳炎の抗体検査は、IgM捕捉ELISAと中和試験が標準です。CFやHIは感度が低いため用いません。当室は、WHOから世界特別ラボラトリーに指定されていますので、日本脳炎の抗体検査は、国内、国外の依頼にかかわらずIgM捕捉ELISAと中和試験を用います。

WHOはわが国の勧奨接種中止に関して、以下のようにコメントしています。
⇒Acute disseminated encephalomyelitis (ADEM) temporally coinciding with JE immunization using the mouse brain-derived vaccine has been reported at frequencies corresponding to 1 case per 50 000-1 000 000 doses administered, but no definitive studies are available. Based on observations of a case of ADEM temporarily associated with JE vaccination, the recommendation for routine childhood JE vaccination has been withdrawn in Japan. However, the Global Advisory Committee on Vaccine Safety concluded recently that there was no definite evidence of an increased risk of ADEM temporally associated with JE vaccination and that there was no good reason to change current recommendations for immunization with JE vaccines. Mouse brain-derived vaccine has been given safely in various states of immunodeficiency, including HIV infection.
(WHO: Weekly epidemiological record 81:337.2006)
感染症情報センター日本脳炎Q&A
日本脳炎ワクチン接種に係るQ&A(厚生労働省)
媒介蚊について 
日本脳炎ウイルスの主媒介蚊はコガタアカイエカです。しかし、その他、自然界で感染している蚊は5属24種に達し、アカイエカ、ヤマトヤブカ、ヒトスジシマカ、オオクロヤブカなども感染が報告されています。しかし、感染=媒介能があるということではありません。日本脳炎ウイルスが感染した蚊の唾液腺に出てこない場合は、媒介蚊とはなりません。ただし、感染が成立するということは媒介蚊になりうるということです。コガタアカイエカを国内から駆除してもウイルスは、別の蚊を主媒介蚊として利用することが想定されます。
 コガタアカイエカは、通常水田、灌漑溝、湿地、河川敷、池沼などの大きなたまり水を産卵場所に選びます。夜間吸血性で、日本など温帯では7、8月に多発し、熱帯では雨季に多発します。吸血対象としてはヒトよりもブタ、ウシ、ウマのような大動物を好みます。日本脳炎ウイルスに感染すると一生涯ウイルスを保有し媒介する。コガタアカイエカの移動距離については、数キロメートルから30キロメートルといわれますが、30キロメートルという距離に関して、我々はその根拠となる記録等を渉猟しておりません。しかし、以前に富山市の豚舎でコガタアカイエカを調査していた時に、10km離れた水田地帯で農薬散布日に捕集数が激減した事例などから、一晩に10km程度は移動すると考えられています。
 アカイエカは雨水マス、側溝などの水が停滞しているような場所で発生し、ヒトスジシマカなどは、植木鉢の水受け皿や古タイヤなどちょっとしたたまり水で発生します
(2015年11月5日 ウイルス第一部)
日本脳炎Q&Aへ

日本脳炎ワクチンとは。
日本脳炎ワクチンは、不活化ワクチンです(不活化とは、ウイルスの感染性をなくすことです)。日本脳炎ワクチンは、1954年
我が国で開発されたワクチンで、その製法はマウスの脳にウイルスを接種し、発病したマウスの脳を採取して、不活化後に高度に精製したワクチンです。日本脳炎ワクチンの製造技術は、タイ・ベトナム・インド・韓国・台湾などに供与され、アジアの日本脳炎制御に大きく寄与している。中国では弱毒生ワクチンも使用されていますが、WHOによって承認されているワクチンは現行のマウス脳由来不活化ワクチンです。培養細胞(Vero細胞)を用いた組織培養由来不活化ワクチンが新たに開発され、2009年6月2日より市場に供給される予定です。
*Vero細胞:千葉大学医学部 安村美博先生によって1962年にアフリカミドリザル腎臓細胞より樹立された細胞株で、WHOがワクチン製造に使用することを認めている数少ない株化細胞である。
Vero細胞樹立に関しては、清水文七先生の著書「ウイルスの正体を捕らえる ヴェーロ細胞と感染症」(朝日選書)をお読みください。
米国のワクチンメーカーが、2009年8月6日初回製造を終了した新型インフルエンザワクチン(A/H1N1)もこのVero細胞を用いて製造されたものです。

臨床症状
 日本脳炎の潜伏期は6〜16日間といわれる。本症の定型的な病型は、髄膜脳炎型というべきであるが、脊髄炎症状が顕著な脊髄炎型というべき症例もある。典型的な症例では、数日間の高い発熱(38〜40℃あるいはそれ以上)、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などで発病する。小児では腹痛、下痢を伴うことも多い。これらに引き続き急激に項部硬直、光線過敏、種々の段階の意識障害とともに、神経系障害を示唆する症状、すなわち筋強直、脳神経症状、不随意運動、振戦、麻痺、病的反射などが現れる。感覚障害は稀であり、麻痺は上肢で起こることが多い。脊髄障害や球麻痺症状も報告されている。痙攣は小児では多いが成人では10%以下である。単なる発熱を示す症例や髄膜炎を示す症例も報告されている。
 検査所見では、末梢血白血球の軽度の上昇がみられる。急性期には尿路症状がよくみられ、無菌性膿尿、顕微鏡的血尿、蛋白尿などを伴うことがある。髄液圧は上昇し、髄液細胞数は初期には多核球優位、その後リンパ球優位となり10〜500程度に上昇することが多い。1,000以上になることは稀である。蛋白は50〜100mg/dl程度の軽度の上昇がみられる。
 死亡率は20〜40%(国内での過去25年間では約17%)で、幼少児や老人では死亡の危険は大きい。精神神経学的後遺症は生存者の45〜70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多い。パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害などである。

治療・予防
 特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。高熱と痙攣の管理が重要である。脳浮腫は重要な因子であり、脳圧亢進に注意しなければならない。日本脳炎の予後が30年前と比較しても死亡例は減少したが全治例は約3分の1とほとんど変化しておらず、治療の難しさが明らかである。従って日本脳炎は予防が最も有効な疾患である。予防の中心は、予防接種と蚊の対策である。日本脳炎の不活化ワクチンが予防に有効なことは、すでに証明されている。

病原体
 日本脳炎はフラビウイルス科に属する日本脳炎ウイルスに感染することによっておこる。このウイルスは、伝播様式からアルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)とも分類される。日本などの温帯では水田で発生するコガタアカイエカが媒介するが、熱帯ではその他数種類の蚊が媒介することが知られている。ヒトからヒトへの感染はなく、増幅動物(ブタなど)の体内でいったん増えて血液中にでてきたウイルスを、蚊が吸血時に取り込み、1〜2週間後にヒトを刺した時にヒトが感染する。ブタは、特にコガタアカイエカの吸血源として好まれること、肥育期間が短いために毎年感受性のある個体が多数供給されること、血液中のウイルス量が多いこと等から、一番の増幅動物となっている。しかし、日本脳炎ウイルスは、ブタ以外にヒト、ウシ、ウマ、ヤギ、イヌ、イノシシ、キツネ、マウスなどの哺乳類。サギ、シチメンチョウ、ツル、ガンなどの鳥類。トカゲなどのは虫類にも感受性がある。ヒトでは血中に検出されるウイルスは、一過性であり量的にも極めて少なく、自然界では終末の宿主である。また、感染しても日本脳炎を発病するのは百人〜千人に一人程度(異なる調査結果であるため数字に幅がある。)であり、大多数は無症状に終わる。フラビウイルス属のなかでも、特に日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス(1999年より夏期に北米で流行している)、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレー脳炎ウイルスは相同性が非常に高く、これらは日本脳炎血清型群(Japanese encephalitis serocomplex)とよばれる。

         <日本脳炎の発生地域>          中国西域・北部は日本脳炎ウイルスの活動があるという報告はない。


疫学
日本脳炎は極東から東南アジア・南アジアにかけて広く分布している。パプアニューギニアにおいても1997年に患者発生が報告された。1995年にオーストラリア北部のBadu島、1998年にBadu島とヨーク岬半島で日本脳炎患者が発生した。
アジア以外の地域への日本脳炎ウイルスの広がりが明らかになった。世界的には年間3〜4万人の日本脳炎患者の報告があるが、日本、韓国、台湾はワクチン接種によりすでに流行が阻止されている。厚生労働省では毎年夏期にブタの日本脳炎ウイルス抗体獲得状況から間接的に、日本脳炎ウイルスの蔓延状況を調べている。それによると、毎年日本脳炎ウイルスを持った蚊は発生しており、国内でも感染の機会は無くなっていない。

ブタは通常生後6ヶ月以内に出荷されるので、夏期前には日本脳炎に対する抗体を持たないブタが供給される。

主にコガタアカイエカによって媒介される日本脳炎ウイルスによっておこるウイルス感染症であり、ヒトに重篤な急性脳炎をおこす。日本脳炎ウイルスはフラビウイルス科に属するウイルスで、1935年ヒトの感染脳から初めて分離された。

第45回日本脳炎ウイルス生態学研究会(2010)プログラム抄録集
第40回日本脳炎ウイルス生態学研究会 プログラム&抄録集


日本脳炎 
Japanese encephalitis














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2015年日本脳炎患者情報
報告都道府県
(推定感染地)
発病日 年齢(代) 転帰
千葉県 8月18日 1歳未満
奈良県 10月 80歳代


2014年日本脳炎患者情報
報告都道府県
(推定感染地)
発病日 年齢(代) 転帰
兵庫県 4月14日 1-5歳 回復
熊本県 9月 65-70歳


2013年日本脳炎患者情報
報告都道府県
(推定感染地)
発病日 年齢(代) 転帰
熊本県 8月16日 60-65歳
長崎県 9月7日 80-85歳 死亡
三重県 9月10日 70-75歳
熊本県 9月3日 85-90歳
岡山県 9月5日 75-80歳
京都府 9月22日 65-70歳
兵庫県 8月30日 65-70歳
徳島県 9月6日 75-80歳
京都府 8月25日 70-75歳 死亡
※夏季の脳炎は日本脳炎検査を提出しましょう!



2012年日本脳炎患者情報
報告都道府県
(推定感染地)
発病日 年齢(代)
福岡県 9月 70歳
熊本県 9月 70歳


2011年日本脳炎患者情報
報告都道府県
(推定感染地)
発病日 年齢(代)
東京都(インド) 1月28日 70歳
沖縄県 7月 1歳
福岡県 8月 10歳
長崎県 8月 60歳
山口県 7月 70歳
福岡県 8月 60歳
福岡県 9月 80歳
福岡県 10月 70歳

2010年日本脳炎患者情報
発生地(県)
(推定感染地)
発病日 年齢
長崎県 8月28日 86歳
山口県 9月4日 6歳
三重県 10月2日 63歳
高知県 9月26日 70歳


2009年日本脳炎患者情報
発生地(県)
(推定感染地)
発病日 年齢・性別
熊本県 8月6日 7歳・男児
大阪府
(滋賀県でも感染機会有)
8月22日 40歳代・女性
高知県 8月24日 18ヵ月・女児
(注)年齢は発病時の年齢、小児症例はいずれも回復した。

2008年日本脳炎患者情報
発生地(県)
(推定感染地)
発病日 年齢・性別
茨城県 5月27日 60歳代・男性
愛知県*
(奈良県でも感染機会有)
8月23日 50歳代・男性
茨城県 9月9日 50歳代・男性



急性脳炎報告数
2004 166
2005 188
2006 167
2007 216
2008 182
 夏季の急性脳炎は日本脳炎の可能性があります。
日本脳炎の実験室診断が必要です。
検査に関してお困りの場合は、国立感染症研究所
ウイルス第一部までご連絡ください。
TEL(03)5285-1188、takasaki@nih.go.jp
検査依頼書様式



2007年日本脳炎患者情報 2006年日本脳炎患者情報 2005年日本脳炎患者情報
発生地(県)
(推定感染地)
発病日 年齢・性別 発生地
(推定感染地)
発病日 年齢・性別 発生地
(推定感染地)
発病日 年齢・性別
熊本 8月30日 60歳代・女性 高知 8月14日 46歳・男性 三重県 8月1日 68歳・男性
福岡 8月26日 40歳代・男性 熊本 9月2日 65歳・女性 佐賀県 8月18日 65歳・女性
石川 9月16日 80歳代・女性
(転帰:死亡)
熊本 9月9日 48歳・女性 静岡県 9月15日 32歳・男性
石川 10月9日 60歳代・男性 熊本 9月10日 3歳・男児 熊本県 9月19日 72歳・男性
山口 10月6日 60歳代・男性 福岡 9月13日 68歳・男性 島根県 9月24日 71歳・男性
大分 9月10日 70歳代・女性 福岡 9月9日 58歳・男性 岡山県 9月12日 58歳・男性
島根 9月28日 70歳代・女性 島根 9月25日 53歳・女性 岡山県 9月23日 77歳・女性
愛知 9月22日 40歳代・女性
(転帰:死亡)
茨城 8月5日 19歳・男性
鳥取 10月18日 40歳代・男性 ↑上記茨城県の症例の報告は2007年であった。

2007年日本脳炎患者発生状況は、9例のうち石川県で2例、愛知県で1例の報告があった点が特記すべき点である。
2006年の茨城県の症例が、2007年に広島県から報告されたため、2007年の報告数は10となったが、ここでは実際の発生状況を記した。




































































































































WHO西太平洋地域日本脳炎ラボネットワーク会議が国立感染症研究所にてH22年5月27日に開催されました。
 







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関連文献・業績 へのリンク
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